言葉

「知らんけど」ってなぜ流行りだした?どこがウケてるのか解説

「知らんけど」という言い回しはなぜ流行っているのでしょうか。たとえ自分の発言が情報として正しいものであっても、相手に対する断定的なものの言い方になるのが嫌なので、「知らんけど」とへりくだって、最終的には目線をそろえるという意図がそこに隠されているのです。

「知らんけど」が流行りだした理由

「知らんけど」という関西弁が、Z世代を中心に流行しています。「知らんけど」とは、文字通り「知らないけど」という意味で、会話の中で何かの情報を伝えた後に付け加えて、話そのものを曖昧に終わらせる効果を持つ言葉として使われます。

関西弁ではありながら、関西地区限定で用いられるだけでなく、SNSなどを通じて全国的にこの言い回しが使われ始めたため、2022年の「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされて一躍有名になりました。

大賞には「村上様」が選ばれましたが、「オミクロン株」や「国葬儀」といった2022年を象徴する出来事に由来する言葉が並ぶ中、この「知らんけど」は、何か特別な出来事が言葉の出典になっているのではなく、自然発生的に流行して使われているという点に大きな特徴があります。

「知らんけど」は誰が流行らせた言葉なのでしょうか。実はその点が不確実で、先の流行語大賞でも受賞者は特定されていません。

ただし、同年にリリースされたジャニーズWESTの「しらんけど」や、ベリーグッドマンの「すごいかもしれん」に使われており、これらの曲が発信源になったという説もあります。他にもタレントの千原ジュニアさんや上沼恵美子さんが使い始めたという情報もありますが確証はありません。

「知らんけど」が流行っている理由

「知らんけど」という言い回しはなぜ流行っているのでしょうか。

「現代用語の基礎知識」では、その言葉の意味を「文末に付けて、断定を避け、責任も回避する言い方」と定義しています。つまり、「情報として伝えるけれど、それについては確実ではないし、自分はその内容に責任を持たないよ」といった第三者的な立場を担保する言い回しというわけです。

この言葉を付け加えることにより、発言に対する責任から逃れられるという安心感が得られますが、それだけではなく、「自分は情報を伝えてあげている」という上位の立場からうまく降りられるという効果もあります。

たとえそれが情報として正しいものであっても、相手に対する断定的なものの言い方になるのが嫌なので、「知らんけど」とへりくだって、最終的には目線をそろえるという意図がそこに隠されているのです。

さらに相手との会話の掛け合いで、コミュニケーションを深めようという狙いもみられます。具体的には「知らんけど」「知らんのかい」というやり取りがそれで、情報の伝達とともに親愛の情も深められる一石二鳥の便利な言い回しとなるわけです。

いわばコミュニケーションの潤滑油といえるもので、「知らんけど」を使えば、悪目立ちすることを避けることができるようになります。つまり、この言い回しが流行っている背景には、仲間うちで浮きたくないという横並び意識が強く根付いているといえるのです。